株主

2012年11月30日

霜月は、「Italian KITCHEN 26」で忘れましょう。

 
突然の連絡が入って、心臓をギュッと強く掴まれたような感じがした。
いつかは来るだろうという予感はあったけれど、まさかこんなに早いとは思わなかった。

少しだけ逡巡する。
行く、と心は決まっている。ただ、どんな顔をすればいいのか。
どんな自分でいられたらいいのか。ちゃんと自然に接することができるのか・・・

そんな自問自答を繰り返しながら、急いで身支度をする。
気持ちを整えるために、薬を一粒飲んだ。
履いたブーツから覗く膝が、かすかに震えているのを振り切るように家を出て、
向かった先は、 「Italian KITCHEN 26」 。


sDSC05880.jpg
安福路23号 「Italian KITCHEN 26」 。 あの 「La petite fleur(小花咖啡館)」の、お隣。


とてもワインを飲みたい気分の日だったので、
割合リーズナブルに、気軽なイタリアンが楽しめそうなお店を選んだ。

初めて訪れて、思った以上に小ぢんまりした佇まいに、一瞬不安になる。
日曜日の夜9時近くだというのに、中はお客さんでいっぱい。
予約もせず向かったので、おずおず店内へ入ってみると、
運良く、2人用のテーブルが1つだけ空いていて、そこに通された。


sDSC05877.jpg


カウンターとテーブル席は人一人通れるだけの間しかなく、
奥に4人席が2つ程あるくらいの、手狭な空間。
わりと明るい照明に包まれた、小粋なカジュアルレストランといった雰囲気に、
肩の力もやや抜けて、他愛ない会話が楽しめそうな気分になってくる。


sDSC05867.jpg


何に対する乾杯なのかは曖昧なまま、ワイングラスを軽くぶつけあった。
実はビールは、誤って余計に頼んでしまったもの。
「一緒に飲もうよ。チェイサーにしていい?」
と、いつものように言うと、いつものように笑ってくれた。


sItalian KITCHEN 26.jpg
適当に選んだ白ワイン。銘柄は・・・ コルクの写真だけじゃ分からないかしら。


でも、スッキリしていて舌触りが良く、飲みたかった味のするワイン。
メニューに目を通しながら、どれにしようか?なんて会話をしばらく交わすうちに、
アルコールも手伝って、緊張もだんだんとほぐれてくる。

互いの近況や予定なんかを伝え合って、それに対して話題も膨らむ。
・・・実際、この頃あたりまでは、比較的うまくバランスを保っていられたように思う。


sDSC05868.jpg sDSC05871.jpg


マグロのカルパッチョに、イカのフリッター。
海鮮系で苦手なもの多いはずなのに、マグロとイカは大好きよね?
そんなのよく知ってる。だから絶対それを選ぶと思ってた。

口に入れた後、 「・・・うん、うまい!」 って満足そうな笑顔が出る時、
それを見るといつも安心して嬉しくなったよ。
食べ物が熱かったり、頬張って喋れないと、よく親指も立ててたね。

一緒に食事をすると、いっそう美味しく感じるのは、6年前から変わらない。


sDSC05873.jpg


ボンゴレビアンコ。これはちょっと珍しいチョイスじゃない?
「さっぱりしたオイルパスタが食べたかったから」
なるほど。自分にとっても大好物だから、そのオーダーには賛成。

けれど、まず一口目の感想は、
「・・・ちょっと、思ってた味と違わない?」
そうね、確かに。もっとガーリックとアサリの旨味がガツンと来るのを想像していたけど、
やや控えめで、まったりとした後味。まあ、これはこれで美味しい。


共有したものに、意見の一致をみると、どうしても胸は高鳴ってしまうもの。
ワインも進んで気持ちも高揚し、久々の楽しいおしゃべりに花も咲いた。
笑顔も、互いに自然と浮かんで、こんなひと時がずっと続いたらいいとすら思った。



sDSC05875.jpg
もともと入店時刻が遅かったので、ゆっくりしていると徐々にお客さんも減り・・・


・・・どちらの、なんの一言が引き金になったのかは、もう思い出せない。


ただ、ふと何かをきっかけに感情の乱れる瞬間が、確実にあった。


それは丁度、気分良く2本目の白ワインを開け始めて、
「さっきのに比べると余韻の残る風味だね」 なんて、酔いもまわりかけた矢先の出来事。



そうしたらもう、そこからは止まらなかった。
曖昧で長く憂鬱だった日々に溜まってきた様々な想いが、
堰を切ったように口から溢れ出し、目からは涙となって零れ落ちた。

本当はぶつけたくない… と、随分隠してきたはずの本音なのに、
どこかで、これ以上は遠慮し続けても何も変わらない、ということに気がついていて、
一度吐き始めてしまったら、もはや後戻りはできなかった。



sDSC05879.jpg


あたしだって、守れるものなら守りたかったよ。
一生懸命、壊さないように、これ以上ない努力と忍耐を、あたしはしてきたはずだと思う。

こんなのおかしいと分かっていても、
黒いものも白なんだと無理やり自分を納得させて、過ちは自分のせいだと責めてきた。
その皺寄せが、どれほど心や体に支障をきたしても、我慢さえすれば叶うというなら、それでも良かった。

それがどうしてだか、分かる?
そんなこと、本当は分かっているんだよね?
あの時どれだけ気を遣っていたか、気づいていたと言うんだものね?
でも、応えることができない。

大切だったはずのものを、どうして大切にしきれないの…?

あたしは、ずっと大切にしてきたよ。
それでもなお、もっともっと大切にすれば良かったと後悔してる。
今でも諦められないから、捨てきれないから、だからこんなに泣くんでしょ?

できることなら、壊したくなかった。

・・・じゃあ、あたし、これ以上どうすればよかったの?
あたし、待ってきたはずだよ。十分すぎるほど、じっと黙って、待ってきたと思う。
それでも願いは届かなかったじゃない。
もう、あたしの力だけでは、どうにもならなかったじゃない。



sItalian KITCHEN 26_2.jpg
お店からのサービスで頂いたオリーブがテーブルに届けられても、嗚咽は止められず…。


だけど・・・
“後悔してる” なんて言って、ごめん。
本当は、感謝してるよ。これ以上ないほどの想い出を作れた日々だったと思う。

こんな所で、たくさん責めてしまって、ごめん。
本当はね、今までずっと、自分のことを責め続けてきたんだよ。


せっかく顔を見れたのに、伝えるべきことを間違ってしまった。
せっかくここまで耐え抜いてきたのに、
そんなものも全部むだにしてしまうような失敗を繰り返して、結局は・・・
今さら自分で壊しちゃったのかなって、また悔やんでる。


いつまで、一体どうしていたら、一番良かったのでしょうか?


でも。
「もう前向いて大丈夫だよ」 と・・・
最後にもらった、自分がずっと望んできた結果とは正反対の、その一言が。

もうこれ以上は仕方なかったんだと、いつか納得できるまで。
責めたり悔やんだり悲しくて涙したり胸が潰れるような思いをしたり、
そういう苦しい時から解放されるために歩むべき、正しく明るい道の始まりなのだと。



「 傷つきあったさよならだけが 形に残るものだとしても
  たしかにあった あのときめきが いつか二人を癒してくれる 」

                              ――『たかが愛』 中島みゆき




*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*
■Italian KITCHEN 26■
上海市徐匯区安福路23号(×常熟路)
Reservations: 021-5404-3109




にほんブログ村 海外生活ブログ 上海情報へ 人気ブログランキングへ 中国関連ブログランキングへ
 



この記事へのトラックバック

×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。