『 今日は、ちょっと珍しい話をします。
きれいなジャイアン というのをご存知ですか?
あの名作 「ドラえもん」 の、コミックス36巻収録 “きこりの泉” に登場する、
ジャイアンこと剛田武が、見た目も心も美しく生まれ変わった聖なる姿のことである
と、こちら で要約されている通りです。
(以下、抜粋も含みます)
童話の “きこりの泉” をモチーフにした秘密道具で、
何らかの欠陥を抱えた品物を投げ込むと、女神さまなるものが現れ、
投げ込んだ品物の欠陥をなくした上位品を持ち、
「あなたが落としたのは、この○○ですか?」と問うてくる。
ここで嘘をつくと何ももらえないが、正直に答えるとその上位品のみもらえる、というもの。
この道具を前に、ジャイアンが大量のおもちゃを抱えてやって来るのですが、
あまりの重さでフラついてしまい、彼自身が泉へ転落してしまいます。
そこで出てきた女神さまが連れてきた人物こそ、
きれいなジャイアン なのです。
女神さま : 「これですか?」
のび太・ドラえもん : 「いえ、もっときたないの。」 ←思わずうっかり正直に返答
すると、女神さまは、
こうして、“きこりの泉” の女神さまからは、品行方正できれいなジャイアンを譲与されました。
元のジャイアンの行方は分かりません。
こういうお話です。
最近、ある出来事があってから、このストーリーが頭から離れなくなりました。
私も、深い深い森の中をずいぶんと彷徨った挙句に、
女神の棲む “きこりの泉” へ、うっかり落としてしまったのでしょうか?
まっすぐな想いを傾けてきた愛着ある欠陥品を。
そうして “きこりの泉” から現れた、きれいなジャイアンなるものは、
よく似た面差しで、同じ声で、親しみ深い言葉遣いで、
私に、ほんのり温かな優しさを分けてくれる、奇跡のような存在でした。
心根が良い人、というのは本当にいらっしゃるのですね。
陽だまりのような安らぎに触れると、
それはこちらにまで伝わって、ゆるゆる穏やかな澄んだ心地になれます。
ありがとう。笑顔でそう告げると、
「ならば本望です」 と、きれいなジャイアンも笑いました。
そこに真心の意味を感じた時、私の中で、何かが少しずつ変わる兆しがあったのです。
新しいシアワセとか、悦びとか、
そういう可能性のようなものを信じて未来を望める、淡い光が差した。
「あなたの真摯さは、ときにあなた自身を傷つけてしまいそうで。」
それでも私は、長いこと、かつてのジャイアンをずっと大切にしてきました。
“きこりの泉” に落とす前のジャイアンこそを。
けれど今は・・・
・・・・・・戯れ言が過ぎましたね。 』